3 志野の魅力
2008年 12月 04日
志野は日本人が初めてつくり上げた白いやきものです。鉄分の少ない白土に白い長石釉をたっぷりとかける。その際、表面にはピンホールという無数の穴が生じ、釉のかけ方も無造作な為、ムラが出き、緋色とよばれる、ほのかな赤みが全体に生じる。
つまり、完全美を求めた白磁や染付の白さとは明らかに違う。茶道の真髄「不完全な美」に叶う白いやきものだから人を引きつけるのでしょう。
その志野が他のやきものと大きく違う点は、原料の製法にもあります。一般の土は、水簸により粘土にしますが、あくまでハタキ土を使います。乾いた原土を砕き、フルイ、水と練り合わすだけの製法は、一般には水簸で取り除かれてしまう鉄分、アルカリ分等を残すこととなる。釉薬においても、一般の長石はトロミルで細かく200目程度に擦り潰すのだが、志野では、スタンパー製法の荒い60目程度の長石を使う。これもまた、水洗いしない為、鉄分、アルカリ分等が残る。この、取り除かれなかった土、釉薬の鉄分、アルカリ分等が、あの美しい緋色を生み出してくれる。(7緋色の秘密を参照下さい)
また、長石粒が荒く不均一になものを使う為、深みのある美しい淡雪のような白さとなる。これは、長石が石臼で砕かれる為、川の上流の石のようにゴツゴツしたままだからである。トロミルで擦ると、川の下流石のように角のとれた丸い形になってしまう。こうなっては志野としては使えない。
昔のスタンパーは水車を動力としていました。谷川の水の多い季節と、少ない時との搗き具合の違いが、かえって良かったようです。