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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

22 素人と玄人

 良寛さんは、「詩人の詩、書家の書、料理人の料理は嫌い」と言った。陶器においても同じである。安定した技術に支えられた窯元の製品は、技術的にはうまく出来ているが、味がない。使っていてすぐに飽きてしまう。

 やきものの歴史を見ると、名品は素人が作ったものが意外に多い。
 京都の刀剣の鑑定士、本阿弥家に生まれた光悦(こうえつ)は、書家として有名だが、いろいろな芸術に携わった。その一つに陶芸がある。しかし、土も釉薬も窯屋からもらい、ただ創るだけで、焼成も全くの他人まかせ。その作品が、国宝にまで指定されている。
 魯山人も書家だし、青木木米、川喜田半泥子、石黒宋磨、等もそうだ。
 
 何故、知識も技術もない素人が、陶芸界においては名品が作れるのか。

1.作品には、作り手の精神性が表れる。彼らは、一つの道を極めた人だからである。
陶芸の技術は一年で身に付くもの(土練り、ロクロ、釉づくり、焼成等)あとは、この技術をどう生かすかは、その人の力量(精神性)。

2.陶芸の素材は天然原料である為、良い原料さえ手に入れば自ずと良いものになる。

3.やきものの仕上げは窯の炎がするもの。この炎の性格をつかまえることは、感覚の研ぎ澄まされた人にしか出来ない。このことを知って、大いに利用した者だけが、ただの石を宝石に変えられる不思議な世界なのである。
by ogawagama | 2008-12-19 15:12 | 22 素人と玄人