41 炎の神様
2008年 12月 21日
陶芸と他の造形美術には大きな違いがあります。作家にとって、最大の見せ場である仕上げを、陶芸は、自らの手で出来ない点です。
やきものが「炎の芸術」と呼ばれる理由がここにあります。
画家、彫刻家等のアーティストは、空間的にも時間的にも、自分の思い通りにものづくりをし、100%納得いくまで手を施すことが出来、最後にサインを入れ、作品を完成させます。
陶芸家は、粘土をつくり、成形し、釉をつくり、施す。そして、窯づめをする。ここまでは、空間的、時間的な制約が多少あるとは言え、ある程度自らの意思どおりに進めることが出来ます。しかし、最後の焼成というプロセスは、自分の手からいったん離し、窯の神様に委ねなければならないのです。焼成は、どんなに科学が発達し、自らの経験を重ねたとしても、計算しつくせません。まさに最後は、「窯が絵を描く」のです。
確かに予測は出来ます。しかし、窯焚きは、季節、天候、風に大きく左右され、必ず偶然がそこに入ります。
しかし、この自然が作り出した偶然美は、何より美しいと私は思っています。この美しさに気づいてからは、人工的な美にあまり興味がなくなってきました。そして、自然の偉大さに、改めて敬意をはらい、必ず窯には、お神酒を上げ、しめ縄をかけるようになりました。窯は、無機物でありますが、私にとっては大切な女房です。