昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

103 ゼーゲル錘2

 原料屋をやっていて一番多い質問は、この釉薬は何度で焼けばよいのですかというもの。
 しかし温度計は、それぞれ個性の違う窯の、ある一点の瞬間温度を示しているだけであり、何度なんて簡単には答えられません。
 最終的には必ず色見を入れてもらい、その溶け具合で判断するしかありません。(ただし色見は小さく、実際の作品より早く溶けるという特徴をお忘れなく。)

 私はよくゼーゲル錘を入れることを勧めます。
 誰もが理解できると思いますが、器にいきなり1200℃の温度を与えても焼けるはずがありません。
 ある程度の時間をかけて1200℃に達した時に焼けるのです。つまり焼き物は最低限、温度計と時間の両方から考えなくてはなりません。

 例えば、温度の上げ方と、ゼーゲル錘10が倒れる関係では、
1時間に300℃づつ上げるとゼーゲル錘10が倒れる温度は1330℃。
150℃づつ上げると1305℃で倒れる。
20℃づつだと1260℃、8℃づつだと1230℃。

 このように時間のかけ方を変えるだけでも、溶ける温度に100℃も開きがあるのです。

 実際の例だと、例えば志野。
 この釉薬はゼーゲル錘8、つまり1250℃で溶かすと一番良いのですが、ゆっくり4日間をかけて温度を上げていく為、温度計が1180℃でゼーゲル錘8が倒れます。
 この焚き方でゼーゲル錘を入れずに1250℃まで上げてしまったら、テカテカのいやらしい志野になってしまいます。経験上、このように温度計だけで判断するよりは、ゼーゲル錘を入れた方が安心できます。

 しかし何度も言いますが最終判断は色見です。色見を入れないで焚いている人もいるそうですが、それは無茶苦茶というものです。また色見で判断する癖をつけておけば、どんな釉薬でも、どんな窯でも焚けるようになります。同じ癖なら良い癖をつけたいものですね。

 ちなみにゼーゲル錘とは、ある量の熱を受けると曲がるように調合された温度測定具のことです。
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by ogawagama | 2012-03-07 22:38 | 103 ゼーゲル錘2