116 唐津
2012年 03月 08日
しかし唐津ではこの常識が当てはまらない。
基本は岸岳系は鉄分少なく、ざっくりしている。
武雄系は鉄分多く、細かいのだが、共にここを掘って10メートル先を掘ると、もう違う粘土になっている。
つまり粘土が層に成っておらず、ぽこっぽこっという感じでいろんな粘土が少量づつある、不思議な地域。
しかし、この粘土の特徴を見事に生かしているのが昔ながらの唐津。
荒い土・細かい土、鉄分多い・少ない、砂気多い・少ない、粘り強い・弱い等、個性の違う土たちを、早焚きの為、窯に温度差があることを利用して、上手く使い分けている。
その上釉薬も、溶ける温度の違う長石釉・土灰釉・藁灰釉・黒釉を用意して、窯の中全てを巧みに使い分け、焼き上げている。
土が素朴な為、釉薬も、長石釉は長石8・土灰2、土灰釉は長石1・土灰1、藁灰釉は藁灰1・土灰1・長石1、黒釉は鬼板2・土灰1・長石1とどれもがシンプルな調合。
地元で採れる対州長石や鬼板を使い、松・楢・クヌギ・樫等を燃やして土灰を作り、藁・萱・笹等を燃やして藁灰も作り、各々が自分流の釉薬を作っている。
原料屋である私の眼から見ると、適当に焼いて、適当に精製して、適当に調合しているので心配にもなるが、どうやらこの大雑把さが、かえって良いようでもある。
昔はこんなやり方であったのであろう、どこの産地も・・・。
窯焚きは1日半の早焚きの為、季節を問わず、今でもあちこちで黒い煙が上がっており、私もいろんな窯をのぞかせて頂いたが、どこも気負わず焚いているのが印象的であった。
この究極が、小鹿田焼。村の皆で協力し合い、粘土を採り、今でも川の水を利用した水車で、土や石を砕き、女が土と釉薬を作り、男が作陶・窯づめ・窯焚きをして、子供を含め家族皆でやきもの作りを生活の一部にしており、私にとっての理想郷である。
本当に心落ち着く産地(大分県日田市)なので、是非一度はここを訪れて見て下さい。
まるで日本昔話の世界ですよ。