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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

127 備前焼成法

 一般的な備前焼の焼成法をここで紹介したい。

 まずは、ガスや灯油のバーナーで火を入れ、窯をゆっくり温める。2日で200℃程になろう。
 4日目で400℃になるが、この400℃を超えた辺りから薪を併用し始める。
 ここからは1時間に10℃を目安に上げていく。
 こうして650℃までを下の焚き口だけで焼くのだが、ここからは上の焚き口との併用となる。
 
 薪の本数を8本、10本、12本、14本、16本と徐々に増やしていき、6日目で1000℃程になろう。
 この間燠がたまると、ロストルを開け、下からの空気を入れたり、時に閉めたりして調整をする。
 更に18本、20本と増やしていき、8日目でマックスの1130℃になろうか。

 この温度帯を3日間引っぱると、11日目辺りでゼーゲル8が完倒するであろう。
 この間決して、1150℃を越えないようにすることが大切なポイントでもある。

 12日目、大くべを何回か繰り返して、最後に炭サンギリを取る為に、大量の炭を放り込み、ウドを終わる。
 1時間程ウドの炭によるガスを抜き、一番と呼ばれる次の部屋に移る。
 
 一番はすでに950℃程に上がっているので12時間程かけてゆっくり焚いていき、同じく最後に炭を放りこんで終わる。

 次いでまた1時間程ガス抜きをして次のケドに移る。この部屋は1000℃程に上がっているので6時間程で終わることでしょう。

 こうして12日間をかけてゆっくり焼き、同じく12日間ゆっくり冷まして窯出しを迎える。
 300人程いる備前作家はこんな焚き方を基本として、ここにそれぞれのオリジナルを加えている。

 備前では長さ60センチ、太さ8~10センチの松割木が6~8本で一束になったものを2000束使います。
 10トントラック一杯程の量になります。
 これは備前の土は有機物・強熱減量・モンモリロナイトが多いので、ゆっくり温度を上げ、ゆっくり冷ますしか方法がないからです。
 しかしこれが備前焼の魅力そのものでもあります。もしこの土を簡単にさっと焼いてしまうと、同じ土とは思えないほど厭らしく、つまらない焼けになってしまうのです。
by ogawagama | 2012-03-08 23:51 | 127 備前焼成法