昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

149 作品鑑賞

 原料屋である私が、やきものの展示会を見に行く時、困るクセがある。

 純粋に造形の美しさを鑑賞すれば良いだけなのに、どうしても、素材は何を選び、どう精製し、どのように使っているか。
 そして、どのような窯で何時間かけ、どう焼いているのかという、作家の素材に対するアプローチの仕方ばかりを見てしまう。
 土とか、釉とか、焼成とか、やきものの工程ばかりを見て楽しんでしまう。

 土でも、瀬戸と美濃はこう違う。
 長石もそれぞれに個性があり、含鉄土石も然り。
 もっと言えば、その原料が取れた場所が南向きか北向きか、風が吹いているかいないか、湿っているか乾いているか。
 こんなことも大いに影響するので、果てしない想像をめぐらすことも多い。

 やきものは自然の素材を扱う為、必ず風土性を背負うもの。
 つまり、やきものとは、単なる製品でもなく、単なる表現でもなく、工程の全てを切り離す訳にはいかない。

 一つの茶碗を見て、作品だけの美しさを論じる事も出来るが、しかしそれでは全てを語りつくせない。
 やはり十分に論じようと思えば、土が何であり、どう精製し、長石は何をどう使い、灰は何の木を使ったのか、どんな窯でどの位置に置き、何時間どう焼いて生まれたのか、という全てを知ってこそ、本質が見えてくるのではないだろうか。

 器の表面の色・形だけでなく、全てをよく見て、判って、鑑賞すべきではないだろうか。
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by ogawagama | 2012-03-10 00:03 | 149 作品鑑賞