昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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86 窯焚きを科学する

 窯業試験場が調べたデーターで面白いものがあったので、ここで紹介したい。

 耐火煉瓦製の窯を焚いた場合、燃料を燃やした際に得られる熱量のうち、

1.器自身を焼くのに要する熱量、10%

2.窯を焼くのに要する熱量、18%
  サヤ・棚板・ツクの窯道具を焼くのに要する熱量、38% 合計56%

3.輻射で失われる熱量、10%
  煙突から逃げる熱量、20%
  還元炎の為失われる熱量、1%
  不完全燃焼で失われる熱量、3% 合計34%

 窯焚きの名の通り、窯を焼くのに熱量全体の56%も使い、残念ながら34%もの熱量をロスして、残りの10%だけで器を焼いているのだと、数値で表されると妙に納得出来るものですね。

 私は窯焚きの際、窯のあちこちを触る癖があります。これは窯のどこまでが焼けているかを実際に触ってチェックしているのです。
 私の窯焚きのイメージは、レンガ1枚づつを順に焼いていくというもの。まずはこのレンガを焼く、その1枚が焼き上がると飽和して、その熱が隣のレンガに移り次が焼けていく、ずっとこの繰り返しで。隣から隣へ順に熱が伝わり焼けていき、窯内の全部のレンガに伝わり飽和すると、その熱で中の作品が焼けていくというものです。
 登り窯を焼いているとこのことが、よく分かります。まず燃焼室を焼き、部屋全体が焼き上がると、1の間に移る。1の間を焚いて焼き上がると、その熱が2の間に・・。このことを理解せず焚いてしまうと、失敗することに繋がってしまいましょう。

 また、今焚いている部屋のレンガが全て焼けていないと、中の作品に焼きムラが出来てしまうものです。炎を上手く誘導出来ず焼けていないレンガがあると、いつまでもそのレンガに熱が奪われ続けてしまい熱量のロスになるばかりです。
 レンガの焼く順番を間違えると、炎と熱は高い方熱い方ばかりに行きたがりますし、一度ついてしまった流れを戻すことはかなりの時間と技術が必要となります。窯全体が順番に焼けていくように、常にチェックする癖を付けて、中の作品を焼こうとせず、窯全体に順番に炎を回すことを心がけると良いでしょう。

 窯焚きは、その名の通り、窯を焚くことです。そしていかに平均34%のロスを少なくするか。窯焚きのプロは本当に少ない薪で上手く焚き上げますよ。
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by ogawagama | 2012-03-07 17:33 | 86 窯焚きを科学する