昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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88 薪

 2012年3月現在で、私は自分の窯だけでも84回焚いています。この窯で伊賀・信楽・焼き締め・備前・緋だすき・志野・黄瀬戸・織部・唐津・瀬戸黒・灰釉等いろんな焼き物を焼いてきました。
 そのほとんどが、赤松を使って焼いてきたのですが、勉強の為、いろんなことも試しています。

 灯油バーナーだけで焚いたこともありますが、釉薬ものを焼くには、早く、安定していて、燃料代も安く済むので、良かったのですが、焼き上がったものはきれいすぎて私好みではありませんでした。

 この便利な灯油に比べ、薪はその半分のカロリーしかないので、当然時間が2倍かかる。しかしその為、炉圧もかかり還元も効き易くなります。焼き物は本来この自然な還元で焼くものです。
 酸化と言われている黄瀬戸・織部・緋だすき等も、酸化だけで焼いては実につまらないものになってしまいます。同じ釉薬でも、自然な還元で焼き、最後に窯内をすっきり酸化にしてあげると、別の釉としか思えないほど、深みがある魅力的なものとなります。

 私にとって、いろんな意味から燃料は、薪しか考えられません。薪の中でも、楢・ブナ・樫等の堅木の発熱カロリーは2400~3300カロリー。赤松は3000~3800カロリーと発熱カロリーも違いますが、実際に使うと分かるのですが、堅木の炎はせいぜい6メートル、これに比べ赤松は10メートル以上簡単に伸びます。この違いは窯焚きにおいてはとても重要です。
 この炎の違いを巧みに利用出来れば、いろんな焼き物が楽しめます。薪窯は赤松でしか焚けないというのは、間違いです。私自身いつもと違ったビードロを狙う為、堅木だけでもよく焚きますし、越前は松が少ないので堅木だけで焚く人の方が多いものです。

 最近私は杉・檜で焚くことも多くなってきました。恵那の山の中に住んでいるのですが、この辺りは以前、自然な広葉樹山ばかりでした。ところが戦後人間の欲から杉・檜に植え変えられたのですが、現在は海外の安い材木に押され、山の手入れなど誰もせず荒れ放題です。
 何とかならないかと考えた結果が地産地消。自分たちが木を買い使っていけば山は手入れされるもの。そこで私も地元の杉・檜を買って使い始めました。また、製材所から出る杉・檜の木皮だけでも焚けることが分かりました。
 ビードロも少し黄色がかって独特で美しいものです。

 但し木皮を使う場合気を付けなければならないのは、外材です。海水に浸され塩分をたっぷり含んでいますので、これで焚くと窯も作品もテカテカになってしまいますので、絶対に使わないようにして下さい。

 そういえば私が理想郷としている小鹿田焼も地元の製材所の杉の木皮だけで昔から焼いていました。地産地消をずっと昔から自然に始めていたのですね。
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by ogawagama | 2012-03-07 17:44 | 88 薪