昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


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89 赤松

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 私は数年前まで、樹齢30年以上で10月から12月までに切った、ヤニのたっぷり入った赤松ばかりを集めて使っていました。
 この赤松、土壌が栄養豊富で暖かく日当たりのよい場所で育ったものは、成長が早く年輪の間隔が広く、火力も3000kカロリー/㎏程あります。ところが逆に、土壌が悪く、寒く、日当たりの悪い場所のものは、年輪も詰まっておりずっしり重く、火力は4000kカロリー/㎏以上あるのです。

 また木も生きものです。10月から12月の間は、これから迎える冬の為に、今まで成長の為に使っていたエネルギーを幹や枝にたっぷりため込むようになります。
 このエネルギーを1月から3月の間少しづつ使って冬を耐え、また4月からは再び一生懸命成長を続ける。
 こんな1年のサイクルでたくましく生きているのです。

 だから私は伐採時期にはかなりうるさい。使ってみればよく分かりますが、10月から12月に切り倒したものを、くべるとバチバチバチと激しい音を立て勢いよく燃えてくれます。

 赤松には平均3.2パーセントのテレピンというヤニ脂が含まれていますが、氷点下10℃のここ山岡のものは5パーセント以上入っているものもたくさんあります。
 温暖な備前の赤松と、ここ山岡のものは同じ赤松であっても火力がかなり違います。
 人間と同じで育った環境によって木も1本1本が違うものなのです。これも使い比べるとよく分かります。

 また唐九郎が30年物の赤松が一番良いと言っていた為、これを信じ皆が口をそろえて30年物が良いと言いますが、これは間違いです。年数は全く関係ありません。
 あくまで育った環境と伐採時期がポイント。唐九郎が30年物が良いと言ったのは、当時は薪割り機がなく、斧で割るしかなく、人力では30年物以上が扱えなかったからでしょう。
 今ではチェーンソーも薪割り機も有りますので・・・。小川窯では直径1m以上の100年物も扱いますが30年物と火力の違いはありません。ただし切り易く割り易く運び易いのは30年物程度の太さです。

 窯にとっての食糧でもある大切な薪を、窯焚き直前に買う人ばかりですが、これでは窯焚きの成功率は不安定でしょう。だってどんな状態の薪が来るか分からないじゃないですか。せめて1年前には買い、質に応じ置き分け、使い分けて下さい。
 出来れば、自分で切って割ると、薪一本一本の状態が分かり、これを丁寧に置き分けて、薪置き場で1年以上乾かしておけば、窯焚きの成功率はかなり上がるものです。
 また、大切な木を知ることにもなりますので。
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by ogawagama | 2012-03-07 17:51 | 89 赤松