昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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90 堅木

 堅木とはナラ・ブナ・カシのような広葉樹のことを言い、マツ・スギ・ヒノキ等は針葉樹と言います。

 陶芸の窯焚きには赤松が良いとよく言われるのだが、どうしてだろう。

 実は赤松の灰はとても軽く上に上がり易い為に、器に広く柔らかくかかるので良いと言われる。その上、炎が10m以上伸びて窯全体に炎が回り温度差が少なくなり、すぐに燃えて反応が速いので焚きやすい。また保管するにも早く乾くうえ何年たっても腐らない特徴があります。

 一方、堅木の灰は重く上に上がりづらく、器の正面に激しくぶつかる。炎は短く、ゆっくり火が付きゆっくり燃える、つまり反応が遅い。また保管するにも、なかなか水が抜けず乾きづらい上に、一旦乾くとすぐに腐り始めるので管理が大変なうえ使える時期も短い。

 このような理由から考えると、確かに赤松は良い。

 しかし私は松が手に入りづらく、扱いづらい堅木で焚く、越前の窯焚きからとてもたくさんの事を学んだ。
 炎が短いので窯全体に回す工夫が必要となるし、薪の状態が湿った生木か腐り始めたものかを常に吟味しなければならないし、ゆっくり火が付きゆっくり燃えるので、燠がたまり易く、何度も燠出しをしなければならない上、薪をくべるタイミングをちょっと間違っただけでも、温度が一気に下がってしまい苦労もする。
 だからこそ、しっかり窯の声を聞かないと上手く焚けないから、とても勉強になる。

 勉強の為、自分の窯で赤松だけ、堅木だけで焚き比べたことがあるが、窯焚きの時間は松だと四日、堅木だと五日。薪の量は松を1とすると、堅木は長く焚いた割りには0・8で済んだ。
 しかし一番違ったのは、赤松だと燠出しはしなくてよいが、堅木だと1時間に一回は燠出しをしないといけないこと。また窯掃除の際に出る松の灰はバケツ一杯程だが、堅木の灰は四杯も得られた。

 同じ薪も、こうして焚き比べるとその違いが良くわかります。しかし木の特徴さえしっかり理解していれば、どんな木も薪として使えるということが学べます。

 気になる焼き上がりは、松は器全体に炎が回り淡い緋色に覆われ雰囲気が優しく、ビードロは緑色。
 堅木は正面のみに濃い緋色が付き力強い感じがし、ビードロは黄色っぽくなりました。
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by ogawagama | 2012-03-07 17:57 | 90 堅木