昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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91 薪の焚べ方

 岡山県備前での修業時代、窯焚き仕事には方々よく行った。
 備前の窯は人が立って入れるほど大きく、8時間の3交代制で2週間を基本にしています。
 私のようなよそ者は1回目手伝いに行くと、まずはずっと後ろ向きでの薪割り仕事。窯焚きをまだ見てはならないという儀式です。
 何度かこの仕事に耐え認められると、やっと手元仕事がやらせてもらえます。薪を運び、手渡す仕事。この手元仕事を何回かやるうちに、やっと薪をくべる仕事をさせてもらえるシステム。

 体力的には薪割り仕事をずっとするのが辛く、次いで手元仕事であろう。大きな窯は反射熱がすごく、窯の周りはまさに砂漠、3寸勾配の坂を一輪車で何度も薪を運び、それ以外は窯に張り付いていなければならず、とても熱くとにかく辛抱である。

 とは言え、この二つは体力仕事で済みますが、薪をくべるには経験と技術がいります。

 技術の部分で言うと、薪の放り方、これは練習を重ねるしかありません。
ただ放れといわれると、誰もが投げ矢のように放り込んでしまいます。これでは作品に薪が当たってしまい割れたり、棚板のツクに当て棚を崩したりもします。
 薪はその根元を持ち、水平より30度先を上に傾け、フワッと中に放り込み、薪のお尻から優しく落ちるように投げ入れます。しかも5センチの誤差の範囲内で的確にコントロールすること。
 決して力任せに放りこんではいけません、手首のスナップを最大限に生かして、正確に3mは飛ばす練習を、時間を見つけては繰り返し続けることです。

 こうして身に付けた技術を実戦で駆使して、常に燠床が均一になるように焚べたり、時には炎をコントロールする為にピンポイントにピタリと焚べなくては、焚べ手は務まりません。

 とにかく初心者は炎を怖がって、顔をそむける上に、投げ矢のように放りこんでしまいます。これでは見ている私の方が怖いものです。
 窯の呼吸に合わせて、フワッフワッと炎は出て、引っ込んでを繰り返しますので、この呼吸に合わせて引っ込んでいる時に焚べ、吹きだしているときはちょっと待つだけでいいのです。

 慌てないで窯をしっかり見て焚べるようにして下さい。

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by ogawagama | 2012-03-07 18:03 | 91 薪の焚べ方