昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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92 窯を焚く時期

 独立してから自分の窯だけでもすでに100回近く、修業時代は日本中のいろんな窯を200回以上、つまり300回程の薪窯焚きを経験してきたわけですが、決して窯焚きは難しいものではありません。
 ご飯を焚くのと同じです。「初めチョロチョロ中パッパッ赤子泣いても蓋取るな。」

 最初はとにかく細い薪でくべ過ぎずにゆっくりゆっくりを心がけ、途中はどんな薪でも構いません。とにかく温度を上げ、そして最後は最上級の薪をどんどんくべて焚き上げるだけです。
窯が小さいか大きいかの違いだけで、慣れればほんとに同じなのですよ。

 窯焚きはいつの季節が良いのでしょうか。

 夏に焚いたことのある人は分かりましょうが、湿気と暑さの影響で温度の上がりも悪いのですが、それより焚き手がバテてしまい判断が狂いますので避けた方が良いでしょう。

 私もなぜ夏が良くないのか、あえて挑戦したことがありますが、散々な結果で入院一歩手前となりました。

 真冬は地域によって異なりましょうが、ここ山岡は氷点下10度の地。粘土が凍る事も禁物ですし、手がかじかんでしまい窯づめが困難となりますので避けた方が良いでしょう。

 では秋が良いか、春が良いか。
 この答えは人によって違います。

 秋は空気も乾いており、湿気も少なく最も焚きやすい季節です。薪も少なく済みますし、作品も安定した焼けとなります。従って焚きやすさと安定性を求めるなら、秋がお勧めです。

 しかし私は春の窯焚きを好みます。1.焼き 2.土 3.細工とよく言われますが、細工なんていうものは続けていればだれでも身に付くものですから、外して、3・水と考えます。
 私は焼き物にとって水分と湿気をとても重要視しています。特に窯焚きは大気に含まれる湿気、薪に含まれる湿気、土中の湿気を吸収しながら行われるものですから。

 私が古窯跡を調べた結果、良い焼けの作品が焼かれていたのは、近くに小川が流れ湿気が多い場所ばかりでした。
 私自身の窯も、現在は秋2回・春2回焚きますが、同じ土を同じように焼いても、秋は秋らしく枯れた渋めの焼けが安定して取れます。焚き易いしこれはこれで良いのですが、それに比べ春の焼けは、春らしく明るく華やかな焼けとなり、その上本人がびっくりするようなものが時々取れるのです。
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by ogawagama | 2012-03-07 18:08 | 92 窯を焚く時期