昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

カテゴリ:101 窯焚き( 1 )

101 窯焚き

 私は自分の薪窯を焚くのも好きですが、他人の窯を焚くのはもっと好きですね。
 新鮮でワクワクします。しかし最近はどこに行っても温度計とのにらめっこの窯焚きばかりで、私の出番はなく、本来楽しいはずのものが、変に気を使うばかりで面白みがありません。
 普段の電気・ガス窯で、窯を支配して焚くことに慣れ過ぎてしまっているから仕方ないとも思いますが。
 これらの窯では、各々が導き出した理想曲線をグラフに書き、その曲線に近づけようと焚くことを良しとするし、またそれが出来てしまうので。
c0180774_17392639.jpg

 しかし薪窯は違います。
 天候・湿度・風・月の引力・薪の状態等、様々な自然条件に大きく左右されます。このことに気付けず、いつも前回の焼成グラフを片手に温度計ばかりを見ていては、失敗するのも当然でしょう。
 茶碗100個入れて5~6個取れれば成功と、陶芸界の大御所がテレビで堂々と言っているのを見ると呆れてしまいます。

 むやみに焚き口を開けてはいけませんが、せめて薪を入れる時ぐらいは必ず窯の中をしっかり見て欲しいものです。焚べる前の最後の炎がどこに流れており、くべた後炎がどこに流れるかを見ることで、炎は操れるものとなれます。
 下ばかり炎が流れていては下しか焼けません。逆に上ばかりでも困ります。しかしこれは薪のくべる位置で必ずコントロール出来ます。
 炎を窯の中でまんべんなく回すことが窯焚きの鉄則です。

 この炎を操るには、炎をしっかり見るしかありません。
 しかし皆は温度計しか見ないので、これでは窯焚きがうまくなるはずがありませんね。この際、温度計を外してみてはいかがですか。
 
 温度計がなければ、薪が燃える音を必死で聞きます。
 すると、誰でも焚べるタイミングが分かってきます。上述のように、窯の中をしっかり見ていれば炎を操ることも段々出来てきます。
 こうなれば、あとは自然に任せて焚いていき、最後は作品の溶け具合を見ていれば、火を止めるタイミングも分かってきます。よく目を凝らして見ていると、今どこまで灰がかかっていて、流れているかまで、はっきり見えるものです。

 窯焚きは自然に任せて、その時々の偶然を楽しむものでもあります。
 
 もっと楽しみましょうよ、窯焚きは・・・
[PR]
by ogawagama | 2012-03-07 22:26 | 101 窯焚き