昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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106 焼き芋の原理

 科学の発展に伴い、窯で使われる炉材の進歩は特に著しい。
 重く・硬くなかなか熱くならない耐火レンガと違い、今では軽く扱い易く、釘も打てのこぎりでも切れ作業性がかなり良い上、すぐに表面が熱くなり保温性も断熱性も優れた断熱耐火レンガが主流になってきています。

 この新しいレンガを使うと、今までのように、まずレンガを温め、その熱が段々広がっていき、全てのレンガを焼いてから、中の器を焼くというプロセスが必要なくなってきています。
 その最先端がマイクロ波窯でしょうか。
 すでに緩急自在の焼成が可能となり、実際に3時間で焼ける窯もたくさん出回っています。

 しかし桃山の志野・黄瀬戸・織部・唐津等は、現代の窯で焼かれたものと違い土肌は柔らかく、釉薬のあだ光りがなくしっとりしており、しかもしっかり焼き締まっています。
 何故でしょうか。

 昔の窯焚きでは、窯の構造・炉材・燃料等の関係から、現代のように容易に温度が上げられなかったはず。1200℃をキープするのが精一杯であったと思う。しかしこれがかえって良かったようです。
 この1200℃辺りを長時間キープすることによって、素地と釉薬が溶け合って出来る中間層が多くなり、その為土は、まだ柔らかい表情が残るのに、中間層のおかげでしっかり焼き締まっていたのです。
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 これに比べ、現代の1時間に100℃づつ直線的に上げる焚き方では、器の表面だけは溶けていますが、やきものにとって大切な中間層が少ない為に脆く、その上釉薬の表情も一見きれいではありますが、何だか冷たいものとなってしまっているようです。

 確かに科学の恩恵で、均一な製品を量産する技術は、すでにパーフェクトな水準まで達してきていますが、魅力からは遠ざかっているように思えます。

 人生に無駄なことが何一つないように、やきものも同じではないだろうか。
 昔のやきものが良いのは、ゆったりとした時間の中で作られ、温度が簡単に上がらない分長くゆっくり焼いていたからだったのです。

 例えて言うなら、強火で焼いた焼き芋より、トロ火でじっくり焼いた焼き芋の方が美味しいように。
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by ogawagama | 2012-03-07 23:10 | 106 焼き芋の原理