昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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107 非効率

 昔の窯づくりを想像してみると、専門の築炉職人がいたとは思えないし、レンガもモルタルもない。そのほとんどが山の斜面を掘り、近くの粘土で天井を付けただけのもので、多分そこらじゅうが穴だらけのボロボロなものだったのではないでしょうか。

 しかし、だからこそ何とも言えない素晴らしいものが焼けていたとも考えられます。
 そんなことを時々思うので、私は自分の窯をもう100回近く焼いて、レンガも多少動いてヒビも歪みも出てきていますが、あえて直していません。

 ボロボロの窯が良いというのではなく、完璧な窯からはキレイで均一な作品しか生まれてこないように思っているだけです。とは言え、最初からわざわざボロボロの窯を作る必要はありませんので・・・。
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 また、窯焚きでほとんどの人が温度計を使いましょうが、よく聞く話ですが、温度計が壊れてしまった時、その時の焼けが一番良かったと。窯焚き経験者なら身に覚えがありましょう。
 何かアクシデントがあった時は必ず良い焼けのものが生まれるものです。

 この理由を考えてみると、例えば普段3日で焼いていたものが、アクシデントの為4日かかってしまったというようなケースが多い。つまり時間が長くかかりその分焼けが複雑になったからと考えられます。
 どうしても窯焚きはキツイし、燃料代を安くしようと、ついつい早く焼き上げようと思ってしまうものですが。
 窯は3日で焼かなければいけない、なんてきまりはありませんし、効率を優先してはいけないものですよね。

 窯業は合理性と効率を求めるもの。
 しかし陶芸は違うはず。
 美しいものを生み出す為に、ありとあらゆる手間と、努力を惜しまないもののはずです。
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by ogawagama | 2012-03-07 23:13 | 107 非効率