昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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108 国宝

 焼き物の国宝は25点。
 縄文土器2、埴輪1、壁画1、塑像7、中国青磁花入3、天目茶碗5、李朝井戸茶碗1。
 そして国産のやきものはたったの5点のみ。平安時代の灰釉壷、桃山時代の志野茶碗、江戸時代の光悦茶碗、仁清の香炉と壷しかない。
 陶芸に携わる人間としては少々寂しい。

 しかし、ここでは、この選ばれし5つの作品について語ってみたい。

 それまで野焼きしかなかった日本に、平安時代大陸からいろんなものがもたらされた、築炉・ロクロ・釉薬の技術。この恩恵を受け日本国内で初めての高火度釉の焼き物が完成された。
 その代表がこの平安時代の灰釉壷「秋草文壷」。まさしく日本の焼き物の始まりを証する大切なやきものである。

 茶碗の王様と言えば、やはりこの桃山時代の志野茶碗「卯の花墻」であろう。
 写真では堂々としており大きく見えるが、実物は口径11.7センチ、高さ9.6センチとかなり小ぶり。
 一見無造作に作ってあるように見え、かなりの技巧が入っており、実際にこの茶碗でお茶を飲むと、たいそう美味しいらしい。茶も点てやすく、季節を問わず茶の緑が美しく映える上、国産の初めての白い焼き物ということもあり、まさに国宝の名に値する。

 江戸時代の光悦茶碗の作者は、代々の刀剣鑑定士であり、寛永の三筆の一人である程の書の腕をも持つ光悦。どの茶碗が国宝になってもおかしくない程、茶碗のどれもが良い天才肌。
 彼の考えでは、全部揃ったものなんてのは良くはない。何もかもが良いということは、何もかも良くないと同じこと。この考えに基づき、良質な粘土はあえて使わず「焼き切れ」するような粗雑な土を使い、焼いているうちに自然にヒビが入るよう巧みに窯を焚き、その姿も、作り込まずあえて作りかけのようにして余韻を持たせている。
 他の楽焼きと違う点は、そこに力強さが込められているところ。刀剣を本業とするからであろう。

 これと対照的なのが、「仁清」。
 ロクロも上手く形も良く、焼き方も、模様も全てが良い。華麗なものを作らせたら右に出るものがいない程のセンス。
 そんな彼の功績は、ほぼ同時期に有田で始まった磁器に匹敵する美しい陶器を作ったことにある。陶器に白化粧を施して絵を描くことで磁器とは違う、ぬくもりのある日本独自の色絵陶器を生み出したところ。
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by ogawagama | 2012-03-07 23:23 | 108 国宝