昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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10 やきものの秘伝

 歌舞伎の「椀久物語」をご存知でしょうか?
 京都のやきもの問屋、九兵衛が、鍋島焼の金襴手の手法を、肥前の親友、幸右衛門から教わり、陶工、仁清(にんせい)に伝えた為、幸右衛門は処刑され、九兵衛は発狂してしまう、といった話ですが、他にも、長崎に渡り、九谷焼を起した後藤才次郎、有田に渡り、瀬戸磁器を起した、加藤民吉らの資料を見ると、昔の陶工の技術のやりとりは、命がけであったことが分かります。
 
 現在では、教科書、入門書のようなものはいくらでも出ています。これらを読むことによって、すぐに、出来るものと錯覚しがちですが、これらのノウハウは、ほんの一部分であって、特に、デリケートな秘伝といったものは、どんな本を見ても書かれてはいません。作家が何十年、時に何百年かけて辿り着いた秘伝を安易に教えるはずがなく、あくまでそれらは、木で例えるなら葉っぱでしかありません。枝や幹、最終的には根まで、本当の技術をたたき込まなければ本物のものづくりなど出来ません。
 また、陶芸は他の工芸と違い、複雑な天然原料を使い、最後は人間の手から離れ、窯の炎が仕上げるものです。どんなに科学のメスを入れても、全てが解明できるはずのない世界です。「やきものに王道はない」
 
 つくって学んで、つくって学んで、しっかり根を太らせて下さい。秘伝とは秘密にして本物の人にしか教えない事柄のことです。
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by ogawagama | 2008-12-06 16:21 | 10 やきもの秘伝