昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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125 備前土

 備前の粘土は他の産地とかなり違い、見た目も真っ黒でねっとりしており、ロクロで挽くとまるでゴムのようによく伸び、40センチの壷でも一気に挽ける程です。
 なぜ、このような特徴を持つのでしょうか。

 備前市内の田んぼの底にある粘土を、秋の収穫が終わり次の田植えが始まるまでの間に建設業者が掘り、作家に届けられたものが使われているのですが・・・。

 一般に焼き物で使われている粘土は、湖に堆積されたものなのだが、この田んぼの底の土は、実は海底に堆積されていたものだったのです。
 この為、一般の粘土に比べて、ナトリウムが1.6倍、マグネシウムが2.0倍、カルシウムが3.0倍も多く、耐火度が低い特徴を持つ。
 強熱減量も一般の粘土に比べ、2.0倍と多く、これは田んぼの底にあった為に有機物が多いことが原因であろう。この為真っ黒にも見えている。
 また、一般の粘土の結晶鉱物はハロイサイトなのだが、備前粘土はモンモリロナイトが多い。この為ゴムのような粘りが備わってもいる。しかし反面収縮が大きく割れやすい欠点もある。やはり極めて特異な粘土だったのです。

 しかし、現在では良質な田土も減り、質の劣る田土だけでは焼き傷が出易いので、粒度の荒い山土を混ぜたり、色を調整する為に半磁器土を混ぜて使うようになってきている。
 鉄分が2.5%のものが最も良く、これより多いと素地が黒っぽくなるし、少なすぎると白すぎて安っぽくなってしまうデリケートな粘土でもある。

 備前粘土のもう一つの特徴だが、備前以外の産地は、どこも専門の粘土屋があり、作家はこれを買って使っているのだが、備前だけは未だに作家は粘土を原土で仕入れ、自分のところでそれぞれが好みに応じて精製して使っている。

 私も修業時代はいつも土作りをしていました。こだわりで土練機を使わない作家も多く、1年を通していつもあちこちで土踏みが行われています。
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by ogawagama | 2012-03-08 23:35 | 125 備前土