昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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126 土踏み

 粘土は精製法の違いから、ハタキ土・水簸土・市販土に分けられる。

 ハタキ土とは、山から採ってきた粘土を乾燥させて、スタンパーや木槌で細かく砕き、好みの荒さにフルイをかけ、これで堤防のような土手を作り、中に水を入れ手で混ぜ、足で踏んでいく。
 足の小指側の側面を使って、足で切るようにカニ歩きでグルグル回り均一にしていく。うどんの作り方と同じです。
 こうして何度も踏み混ぜられて、粘りが出たものを、15~20キロに切り分け、ビニール袋に2重にして包み、3年以上寝かしてから使います。
 ハタキ土は粗雑で石も入ったままで扱いづらいものですが、土そのものの個性が生かされ、味のある粘土となります。

 水簸土は、山から採ってきた粘土を乾燥させて、木槌である程度に砕き、これを水に浸して一晩置き撹拌する。
 上に浮いたゴミ等を取り除き、中ほどの水を汲み上げて、木箱に移す。こうして下に沈んだ砂利や小石を捨てて、きめ細かな粘土を作る。木箱である程度乾いたものを、石膏鉢等に移し更に乾燥させ、扱いやすい固さになったところで、同じように15~20キロに取り分け、ビニール袋に2重にして包み、1年程寝かしてから使います。
 水簸土は滑らかで扱い易く焼き傷も出づらく、ほとんどの作家がこの作り方をしています。

 市販土は、その90%が大量生産の窯業で使われるものなので、とにかく安定性が求められ、30種類以上の原料をトロミルという機械に入れ、細かく摺り潰しながら混ぜ合わされ作られている。
 これは1つの原料が無くなってもさほど影響が出ないようにわざわざ多くの原料を使っている訳です。
 精製過程でいろんな機械を使うので、鉄粉が入り込みやすく、これを取り除く為、最後に脱鉄機を通さなければならず100目以下の細かさしか出来ません。
 出来上がったものは真空土練機を通して市販される。すぐに使え便利でその上安く安定している。

 しかし私は、粘土を生きものと考えているので、トロミルで摺り潰しては、土それぞれが持つ結晶構造が壊れてしまう上、一つづつに個性があるものをブレンドしたり、化学物質を混ぜ入れ安定させたり、真空土練機を通して、一瞬の内に粘土を真空状態にして殺してしまい、扱い易くされた粘土はどうも苦手です。
 なんだか死んだものを触っているようで。

 私は、毎年夏場に、自分の粘土を3トン作っていますが、全てハタキ土です。
 夏の土踏みはいい運動になりますし、とても気持ちが良いものです。また自分で手間暇かけて作った粘土には愛着が持て、大切に使えるものです。
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by ogawagama | 2012-03-08 23:40 | 126 土踏み