昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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18 実際の科学

 土を焼いて割ってみて、表面と中が同じであれば、しっかり溶けている証拠。表面と中身が違えば表面が溶け始めた頃。つまり、やきものは必ず表面から溶けていくものなのです。釉をかけなくても素地がしっかり焼けていれば、水は漏らない。これを利用したのが、備前、常滑、信楽、伊賀、丹波、越前焼。それぞれの土に適した温度で、しっかり焼き締めています。
 
 これら焼き締め陶の景色の一つに、ビードロがあります。
 一般に松灰は1250℃あれば溶けると、どの本にも記されていますが、実際は違います。灰は成分が複雑なので、分かり易い例として、亜鉛粉末を使ってみます。融点419.4℃沸点907℃。これを美濃の土の上に置いて1300℃で焼いてみます。1300℃も上げれば全てガスとなり何も残らないはず。しかし、実際にやってみると、半分は溶け、釉状となっていますが、半分程は、ガサガサのまま残っている。前者が机上の学問で、後者が実際の学問です。
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           「松灰を耐火度の強い          「松灰を耐火度の弱い
           美濃土にぬったピース」         信楽土にぬったピース」

 灰も同じで、火を受け入れないような美濃の強い土では、ガサガサ残り、美しいビードロにならない。よく観察してみると、灰は表面から溶けるのでなく、ボディーと接触した所から溶けています。つまり、ボディーが溶け始めないと、灰は溶けないのです。従って、土の耐火度が低ければ、薪窯で美しいビードロとなりますが、高ければ、ガサガサ残ってしまう。決して温度ではなく、土との相性なのです。美濃では、このことを経験の上から知って、焼き締めではなく、釉ものを発展させてきたのです。
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「各灰の実験」(1230℃RF)
上段より 1段目 ベースが耐火度の強い美濃土 (左より)土灰 栗皮 くぬぎ 樫
      2段目      〃                  松 柞 ナラ ひのき 
     
      3段目 ベースが耐火度の弱い信楽土      土灰 栗皮 くぬぎ 樫
      4段目      〃                  松 柞 ナラ ひのき 
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by ogawagama | 2008-12-11 11:18 | 18 実際の科学