昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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19 灰釉

 昔の生活には灰が身近にありました。冬の暖をとることも、風呂を焚くことも、料理の煮炊きにも使われていました。また、畑の堆肥としても欠かせません。わらび、ぜんまい等の、アク抜きにも使っていました。このように、日常生活のいたるところで活用され、陶工も、ほとんどが灰釉を用いていました。
 近代に入り、安定した石灰石、タルクが用いられるようになり、急に使われなくなりましたが、ヨーロッパ、アメリカから陶芸の勉強にくる人たちは皆、灰釉が素晴らしいと言います。
 なぜでしょう。
 
灰にはいろんな不純物が含まれています。釉薬にとって、この不純物が大切な役割をしてくれます。例えば灰には、リン酸が3%前後入っていますが、釉中にリン酸が0.5%以上存在すると、釉に柔らかさが出てきます。他の不純物も、釉に深み厚みを与えてくれ、何故だか冷たいはずの陶器が、温かく感じられます。しかし現代の我々の回りには、量産された合理的な化学製品が多すぎます。これらのものは、無機質で冷たく、人間を疲れさせてしまいます。
 
逆に、灰釉を使ったものは、人の心を和らげてくれます。人間には五感があり、本能的には自然のものを使いたいと思うのでしょう。せめて、毎日手に取るものくらいは、自然のものを使いたいものです。
 
自然のものには、必ず不純物が含まれています。これが、かえって、作品に魅力を与えてくれるものです。決して、この不純物を排除する方向のやきものづくりはしたくないものです。自然がつくり出したものにムダなものは何一つありません。
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by ogawagama | 2008-12-11 11:41 | 19 灰釉