昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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33 素焼

 どの陶芸本を見ても、素焼は650℃~800℃と書かれていますが、果して本当でしょうか?

 私は、小さいものは生がけで良く、大きいものは、釉ハゲ、釉ムラ、割れの防止の為から、素焼した方が良いと考えています。しかし、志野を焼く人にとっての素焼は、500℃が基本です。
 
 成形直後の素地には、水分が20%は残っています。これをしっかり乾燥させるのですが、それでも3%は必ず残ります。これは、窯、窯道具についても言えます。これらのものを焼くわけですから、まずは、300℃までにゆっくりこの水分を出します。(特に240℃辺りは要注意。一番割れ易い。)
 300℃からは、結晶水、有機物の放出が始まり、500℃までに終わるでしょう。
 次に、この500℃からは、素地が緻密になり始めます。特に、573℃を境に、原料の主成分、珪石の結晶構造が大きく変わる為、これ以上上げては、志野の素焼としては失敗と言えます。

 しかし、一般の素焼は、この温度を超すことによって、素地は水を加えても、元の粘土に戻らなくなります。従って、一般の素焼も、600℃で十分。650℃~800℃というのは、陶芸土のことではなく、窯業土(その多くが磁器系)のことを指しているのです。
 
 素焼は何℃と決めつけるのではなく、自分が今回焚く土は何℃の素地が適当なのかを考えてから焼いて下さい。常識は時に常識ではありません。(特に天然原料を扱う陶芸の世界では・・・)
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by ogawagama | 2008-12-20 16:15 | 33 素焼