昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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37 窯焚の心得

 備前というところは、300人以上の作家が薪窯を10~14日かけて、今も焚き続けています。私も修業時代、毎日のように、どこかの窯焚きの手伝いをしていました。当時はまだ、最後のプロの窯焚き職人が居ました。75歳前後のその方は、窯場に入るなり、薪を叩いて回って、まずは、薪の乾燥具合、質を確かめ、使う薪の順番を考えます。薪の管理にとにかく厳しい人でした。窯焚きとなると、60年の経験と勘がありますので、誰より燃料は少なく、上手に焚き上げます。
 
 私はこの人について、窯焚きの勘どころを一年学んだわけですが、まさしくプロの仕事というものを見せつけられました。独立後、私は勘を養う為、あえて、温度計を使いません。薪が燃える音を聞いて焚きます。温度計があると、その温度ばかりが気になって、炎や窯の声を聞かなくなるからです。窯焚きは、本来、窯の声を聞いて、炎の色を見て焚くものです。

そして、
「一.前回の焚き方にこだわらない。(自然相手の為、自然に委ねる)」
「二.早く焚き上げようと思わない。(強火の焼芋よりトロ火の焼芋の方がずっとうまい)」
を自らに誓って、火を入れます。
 
 私が窯焚き職人に学んだことは、「とにかく経験を重ねること。重ねることにより、科学で裏付けされたことがだんだん理解出来るようになり、また更に経験を重ね、また学びを繰り返すこと。しかし、最後は勘に勝るものはありません。窯焚きにおいて知りたいのは、温度ではなく、いろんな条件の統合によって、やきもの自身に起きている変化のはず。温度計に頼るな。」
 そしてもう一つ、「窯は生きもの。不安がって焚くと、失敗します。しかし、自信をもって焚けば、案外、言うことを聞いてくれるもの。」この二つです。
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by ogawagama | 2008-12-20 19:42 | 37 窯焚の心得