昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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41 炎の神様

 
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 陶芸と他の造形美術には大きな違いがあります。作家にとって、最大の見せ場である仕上げを、陶芸は、自らの手で出来ない点です。
 やきものが「炎の芸術」と呼ばれる理由がここにあります。
 
 画家、彫刻家等のアーティストは、空間的にも時間的にも、自分の思い通りにものづくりをし、100%納得いくまで手を施すことが出来、最後にサインを入れ、作品を完成させます。
 
 陶芸家は、粘土をつくり、成形し、釉をつくり、施す。そして、窯づめをする。ここまでは、空間的、時間的な制約が多少あるとは言え、ある程度自らの意思どおりに進めることが出来ます。しかし、最後の焼成というプロセスは、自分の手からいったん離し、窯の神様に委ねなければならないのです。焼成は、どんなに科学が発達し、自らの経験を重ねたとしても、計算しつくせません。まさに最後は、「窯が絵を描く」のです。
 
 確かに予測は出来ます。しかし、窯焚きは、季節、天候、風に大きく左右され、必ず偶然がそこに入ります。
 しかし、この自然が作り出した偶然美は、何より美しいと私は思っています。この美しさに気づいてからは、人工的な美にあまり興味がなくなってきました。そして、自然の偉大さに、改めて敬意をはらい、必ず窯には、お神酒を上げ、しめ縄をかけるようになりました。窯は、無機物でありますが、私にとっては大切な女房です。
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by ogawagama | 2008-12-21 13:01 | 41 炎の神様