昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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50 土の結晶

 私たち陶工が、望む土とはどんなものでしょう。

 産業的には30種類以上の粘土をブレンドすることで、安定した可塑性良好、収縮率15%以内、焼キズが少なく、SK30前後の耐火度に調性し、科学の力を駆使し、鉄分、アルカリ分等の不純物を取り除き、焼傷の出ない良質な粘土が、年間100万トン以上量産されています。
 しかし、このような優等生には何か物足りなさを感じてしまいます。

 本来、山から取り出されたままの土には、それぞれしっかり個性があります。厚ぼったいけど、掌にのせると案外軽く、「ざんぐり」としたもぐさ土。柔らかく、温かさを持つ萩土。素朴な農夫、時に、野武士のような唐津土。原土を触ってみると、土が生きていることを実感できるものです。
 
 なぜ、成分的にさほど差はないのに、原土と製土には違いがあるのでしょうか。

 その答えは、粘土粒子の原子レベルまで見ると分かります。一般の製土は、それぞれの用途によりブレンドされたものですが、トロミルで何時間も擦り潰してつくられます。それぞれの個性がなくなるだけでなく、実は、それぞれが持つ、美しいビルディングのような結晶構造が壊されていたからなのです。
 
 小川窯では、基本手掘りで採取した土を、3年以上空気に触れさせ、雨風にさらし、風化を促し、必ず単味で優しく撹拌するだけの製法です。「さらす」ことにより、カオリナイト鉱物(これが多い土がいわゆる良い土)が増え、トロミルを使わないことで、土の結晶も壊されない為、土がそのまま生きているのです。電子顕微鏡で見ると、この違いがはっきり分かります。

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                上:「六角板状のカオリナイト結晶」
                下:パイプ状のハロサイト結晶
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by ogawagama | 2008-12-24 10:15 | 50 土の結晶