昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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72 半泥子

 「好きな作家は?」と聞かれれば「半泥子」と答える。
 なぜ魅かれるのか。答えは、どの作品も楽しげに気楽に作っているからである。
 
 そんな半泥子の、やきものづくりの信条を調べて見ると、
1 楽しんで作ること
2 土はあくまで単味で、それぞれの個性を生かす
3 窯の中における自然の歪みこそが最も美しい
4 茶碗の良さはまず姿。碗の見込みの豊かさ、口造りの厚み、そして微妙な曲線。
5 イケコロシ

 最後の「イケコロシ」とは、急所だけに力を入れて、その他は気を抜くことらしい。
茶碗づくりで例えると、まず高台をしっかり締める。次に腰を張らせ、充分に力を持たせる。それから、力を抜いて胴を無心に上げ、飲み口に達したら「キュッ」と一呼吸つくることらしい。
 
 彼は、こんな信条で、茶碗だけでも生涯に5万個は作ったという。また「手を加えるほどモノはダメになる」が口癖で、土は単味、釉はできる限り単純な調合、削りは最小限を心がけていた。

 私は彼の、次のエピソードが大好きである。
 
 素焼の時に、いくつもの線状のヒビが入ってしまった。普通なら捨てられるのだろうが、彼はこれを面白がり、枝とみなし、梅の花を描き添えて作品としてしまった。それ以降も、素焼時にヒビが入れば、いつも縄でしばって本焼きをしていたらしい。あの名品「赤不動」も、その一つである。
 
 私は、純粋な遊び心が、芸術においてとても大事なものと考えている。
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by ogawagama | 2012-03-07 10:39 | 72 半泥子