昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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57太陽の力

 小川窯は原料屋でもあるが、他の原料屋との違いに、「太陽の力」というものがある。

 一般に窯業関係の工場は、川沿いの日当たりの悪い場所にあり、暗い室内で、原料が毎日精製され続けています。土は山から掘り出されたものが、そのまますぐにトロミル(ポットミルの大きなもの)に入れられ、30種類近くのものが、砕かれ、混ぜられ、小さな工場でも、1日に30t以上の粘土が作られています。

 ところが小川窯では、まず粘土には、最低3年の太陽の光を当てさせます。今まで土の中に埋まっていたものは、空気に触れられず、アルカリ性です。このアルカリは作品にキズをつけてしまいます。

 昔の窯跡の回りには、莫大な量の割れた作品がありますが、これは、原土で扱う人なら分かりますが、掘ったばかりの粘土で作品を作り、焼くと、アルカリが入ったままとなり、ヒビが入り易く、割れ易いからです。昔の人は、掘った粘土をそのまま作品にする術しかもたず、割れてしまうことが多かったようです。
 
 これを防ぐ策は2つ。
 1つは、ブレンドして安定させる。もう1つは、太陽の力を借りること。
後者の「太陽の力」ですが、3年程日光に当て、空気に触れさせ、酸化させると、どの粘土もまず大丈夫となります。単味の粘土を良しとする小川窯では、こちらの策を取るしかありません。他の原料屋は楽なブレンドの策を取っています。

 なぜ、手間のかかる太陽の策を取っているかには、もう一つ理由があります。
 これは経験論なのですが。例えば釉薬の場合も、原料を調合して、ポットミルを回し、フルイを通し作った釉薬をそのまま使い、焼いたものと、作り上げた釉薬を、一度天日干ししてから、もう一度水と混ぜ合わせて使ったものとは、焼き上がりが違います。この違いの原因は分かりませんが。私は、太陽には何か不思議な力(パワー)があると信じています。いつか必ず、科学的に解明したいと思っています。
 
 次いで1つ、注意事項ですが、一度水と混ぜ合わせ作った釉薬も、3ヶ月以上使わない場合は、また天日干しして、太陽の力を注入して下さい。手間はかかりますが、必ず結果は良いはずです。

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      「山から採ってきた原土は、こうして3年以上太陽に当て、余分なアルカリを取り除く」
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by ogawagama | 2010-04-22 11:50 | 57 太陽の力