昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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2 不完全なもの

 茶道の世界は「不完全なものを良しとする」
 茶道に共に歩んできた陶芸の世界も同じく、特に茶わんにおいては、この考えが顕著である。
 
 粘土というものは、どんどん、どんどん温度を上げてやれば、いずれは皆、磁器のように完全に焼結し、やがては崩れ溶けてゆくもの。つまり、温度を上げれば上げる程「土」からは遠くなっていく。
 
 茶わんの代表、志野、黄瀬戸、瀬戸黒、唐津、粉引、萩、楽等は、あえて土を十分に焼きしめません。その為、素地と釉薬との融合作用が不十分なままであり、つまり、科学的に言えば、まさに「不完全なもの」なのです。
 しかし、反面長所もあります。熱が伝わりにくく、茶を飲むには、実に都合が良い。また、長年使っていくうちに、素地と釉薬との間に異物が入り込み色合いが変わっていきます。よく、「茶わんは使い手が育てるもの」と言われる理由はここにあります。
 
 私も、自分の10年前の茶わんに出会うことがありますが、意外に気がつかないことも多い。使い手が毎日のように大切に扱ってくれた為、見事に生まれ変わっているからです。よく使われた茶わんを見ると、やはり、不完全であるが故に良いものだと実感します。
 
 やきものを、桐箱や棚にしまい込んだままにしていませんか。是非、普段使いにして下さい。陶工からのお願いです。
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        「使い込まれた志野」               「新品の志野」
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by ogawagama | 2008-12-04 14:58 | 2 不完全なもの