昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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80 コテ

 一般にロクロで器を作る場合、コテを使う。コテの型に合わせて形を仕上げるわけですから、従って、作品の種類の数だけいろんな型のコテが必要となります。
 私も修業時代は、湯呑だけでも12個のコテを持ち、1㎜の狂いもない同じ形のものを、1日に300個以上作っていました。それが正しいと教えられてきたから・・・。
 
 市販の粘土は、30種類以上混ぜ合わせ、本来原料それぞれが持つ個性をなくすことで、扱いやすい粘土に完成されています。作り手側にとっては、この方が当然良いでしょうが。
 しかし私は、現在、原土を砕いて、フルイを通して、水で練り合わせただけの、個性がそのまま残る単味の粘土しか触らない。これらの粘土は、作り手側の言うことなど簡単には聞いてはくれません。
 硬い土は硬い作品に、柔らかい土は柔らかい作品になることは、理解し易いでしょうが、信じられないかもしれませんが、個性の強い粘土は勝手に動き出すことさえあります。

 ロクロ板に粘土の塊を置き、「土殺し」(私はこの言い方が嫌いで『土仲良し』と呼びたい)を、2~3度していると、手から粘土の声が伝わってきます。こんな時は、良い作品が次から次へと産まれるものです。
 ところが、この声を聞かずに、自分の都合でロクロをひいてしまうと、その時は気付きませんが、次の日、削りや仕上げをする際、その形の不自然さ、醜さに気付き、結局は改めて作り直さなければならないことが多いものです。
 
 そんな私は現在、皿用1、丸器用1、角器用1の、3個のコテしか持ちません。コテは、形をつくる為のものではなくなり、底を締め、内側のロクロ目をなくす為のものとなり、以前のようにコテに合わせて形をつくることは止めました。量産品のような1㎜の狂いのない形よりは、世界に1つだけの形をつくる方が楽しいではありませんか。
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by ogawagama | 2012-03-07 10:48 | 80 コテ