昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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110 織部のグリーン

 自然が作り出す色合いは美しい。中でも、灰が作り出す淡いグリーンのビードロは、まるで宝石そのもの。ずっと見ていても飽きることがない。
 
 この緑と対照的なのが、着色剤として銅を使った、織部の緑。現代の科学の力をもってすれば、どんな色の釉薬も作り出せてしまうが、何故、桃山時代に、あの強烈な緑釉が生まれたのであろうか?
 
 その理由は、それまで貴重だった原料の銅が、入手し易くなったことにあった。

 戦国時代、爆薬を作った掘りぬき技術が発達し、精錬法も、灰吹き法、南蛮しぼりという新技術が大陸より入って来た為、鉱山開発技術が一挙に進み、銅の産出量は、ピークの1697年頃には、世界のトップだったと言われている。
 こうして、国内では、銅がタップリ安価で使えることになった為に、この銅を顔料にして織部の釉薬が生まれたのである。
  
 しかし、タップリとは言え、この銅を釉薬に使うと、かなりきつい緑色になってしまう。この強い緑をどう器に利用するのか?この答えが「ウイット」に富んでいる。
 
 器全体に緑を使うものは、すずり、香炉だけにして、他は、一部分にしか使わない。つまり、強い緑を器の中でのアクセント扱いする策を取った。
 緑一色の総釉の場合も、釉かけの際は、必ず、濃淡を生かし、深みのある緑にしているし、ほとんどの器は、緑をかけない白い部分には、それまでのような具象的な絵ではなく、図案化した抽象的絵模様を描き、強い緑とのバランスを見事に調和させている。
 その上更に、形(フォルム)にも、あえて動きを付けるといった手の込みようである。
 
 つまり、一つの器において、姿形と色のバランス、絵模様等、見所をいっぱい付け、強烈な緑色を使いこなしていたのです。 
 昔の織部をよ~く見直して下さい。「ウイット」でしょ。
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by ogawagama | 2012-03-08 10:15 | 110 織部のグリーン