昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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114 漆黒の瀬戸黒

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 せっかちな人にぴったりな瀬戸黒。

 志野などは、窯の火を止めてから三昼夜も地団駄を踏んで、待って、窯出ししてからしか、その出来具合が分からない。
 それに比べ瀬戸黒は、ふつうなら茶褐色に焼き上がるものを、窯焚きの最中熱いまま、窯の中から鉄ばさみで引き出し、水の中に放り込む為に生まれるやきものであり、その焼け具合はすぐその場で見て取れる。
 
 タイミングが早ければ、釉がちぢれ、かいらぎ状に。
 ベストなら無限に広がる漆黒色。
 少し遅いと、灰がたっぷり被った窯変模様になる。
 
 調合の割合は、鬼板と呼ばれる褐鉄鉱7割、灰を3割。
 
 1150℃という高温の窯から、いきなり引き出され、冬なら0℃近い水の中に放り込まれるのは、温度に敏感な性質を生かし、「志野の色見」として使われていたからであろう。
 その証拠に、茶碗の底に穴を開け、引っかけ易いようにした黒い茶碗が、物原(モノハラ)と言われる、窯の近くの割れたもの捨て場から、いくつも見付けられている。
 桃山の陶片を調べると、一番量が多いのが、この黒の陶片というのも、その証拠である。

 つまり、実際の茶碗の火前、火後ろ、見込み、ひっくり返して底まで、しっかり溶け具合を見て、温度計の無い時代は、陶工が窯の火止めを判断していたのでしょう。 
 
 利休はこの黒茶碗を、とても寵愛していました。
「侘茶には黒がよい。草庵によく合う。この漆黒色こそ、最も品格の高い色である。」と。

 私も冬は瀬戸黒で茶を飲むことが多い。
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by ogawagama | 2012-03-08 10:32 | 114 漆黒の瀬戸黒