昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

カテゴリ:73 プロデューサー魯山人( 1 )

 魯山人は少年時代から、書の手筋が良く、若い頃は、看板書きや篆刻(テンコク)で生活をしていた。
 次第に古美術に関心が移り、友人と古美術商を始め、次いで、自らが扱う古陶磁器を使って、料理を食べることに興味を覚え、あの有名な「星岡茶寮」(ほしおかさりょう)という会員制の高級料亭を始めるまでに至った。
 そのうち、自分のコレクションの古陶磁器だけを使っていては間に合わないので、鎌倉の自宅に窯を築き、全国から腕の良い職人を呼び寄せ、陶磁器づくりまで始めてしまった。
 つまり、食通が、自分の料理にふさわしい食器を求めて、という変わった経緯からの陶芸家である。 
 
 この魯山人の陶器づくりが実に面白い。
 ろくろ台を間に挟んで、ろくろ師と向かい合い、相手がろくろを引き上げると、魯山人はすぐに口縁をゆがめたり、ヘラで要所要所を削ったり、型を崩したりするだけで、後の絵付け、釉かけ、焼成等は、自分でやることもあるが、ほとんど専門の職人にやらせるだけ。
 
 彼の代表作「まないた皿」も、備前や信楽の土を平らに伸ばし、四角に切っただけのものを、そのまま皿に見立てしまうものだが、その際彼は、四隅をちょっと切り落としたり、ちょっと縁を立てて料理を盛り易くしたり、扱い易くするだけであった。しかし、この一瞬の作業が、平凡な板を、魔法の皿に変えてしまう。 
 
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 何故こんなことが出来るのか。彼は言う。
「300年前の茶碗に匹敵するようなものが作りたければ、千年も二千年も前からの美術に目が利かなければならない」
 そう、彼は、誰よりも広く、深く、古美術品を見ていた人物であったから。 
 私も、現代の陶器だけを見ていたのでは、ロクなものは作れないとは思うが。 
 
 ちなみに、当時の魯山人のコレクション内容は、 
 
 染付380 赤絵150 青磁100 九谷100 唐津250 朝鮮270 
 中国陶磁150 美濃及び瀬戸1350 在銘個人作250 その他国焼500 
計 3500点以上
 その他、瀬戸、美濃、唐津、挑戦古窯の発掘による陶片が10万点以上 
(「星岡」43号 昭和9年より)
 
 これだけのものを、毎日手に取り眺めていたのだから、すごい!
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by ogawagama | 2012-03-07 10:39 | 73 プロデューサー魯山人