昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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3 志野の魅力

 日本人の心を魅了して止まない志野。陶芸に携わる人間なら誰もが焼きたいと考えることでしょう。
 志野は日本人が初めてつくり上げた白いやきものです。鉄分の少ない白土に白い長石釉をたっぷりとかける。その際、表面にはピンホールという無数の穴が生じ、釉のかけ方も無造作な為、ムラが出き、緋色とよばれる、ほのかな赤みが全体に生じる。
 つまり、完全美を求めた白磁や染付の白さとは明らかに違う。茶道の真髄「不完全な美」に叶う白いやきものだから人を引きつけるのでしょう。
 
 その志野が他のやきものと大きく違う点は、原料の製法にもあります。一般の土は、水簸により粘土にしますが、あくまでハタキ土を使います。乾いた原土を砕き、フルイ、水と練り合わすだけの製法は、一般には水簸で取り除かれてしまう鉄分、アルカリ分等を残すこととなる。釉薬においても、一般の長石はトロミルで細かく200目程度に擦り潰すのだが、志野では、スタンパー製法の荒い60目程度の長石を使う。これもまた、水洗いしない為、鉄分、アルカリ分等が残る。この、取り除かれなかった土、釉薬の鉄分、アルカリ分等が、あの美しい緋色を生み出してくれる。(7緋色の秘密を参照下さい)
 
 また、長石粒が荒く不均一になものを使う為、深みのある美しい淡雪のような白さとなる。これは、長石が石臼で砕かれる為、川の上流の石のようにゴツゴツしたままだからである。トロミルで擦ると、川の下流石のように角のとれた丸い形になってしまう。こうなっては志野としては使えない。
 昔のスタンパーは水車を動力としていました。谷川の水の多い季節と、少ない時との搗き具合の違いが、かえって良かったようです。
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           「かいらぎ」                    「ねずみ志野」
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by ogawagama | 2008-12-04 16:35 | 3 志野の魅力