昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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59 釉薬1

 焼きものにとっての衣裳とも言える釉薬。この釉薬の表情でもある色合いは、絵具をパレットの上で自由に混ぜ合わして作品にぺたっと塗るようにはいかない。作家の手の届かない1250度の窯の中でその色が生み出されていくわけだから・・・。しかし、だからこそ、独特な鮮やかさ、透明感、光沢が備わる。
 とは言え、理想の色合いを得る為には、焼成法・釉の調合・原料の選択・粒度・施釉の厚さ・素地との相性等、複雑な要素が絡み合い、どんなに知識を増やしても、どんなに技術を高めても、「これだ」という完成にはなかなか至らないものである。
 極めようと思えば思う程、その奥の深さに悩ませ続けられることでしょう。

 特に技術というものは、練習に練習を重ね、実験による実験を繰り返し、少しづつレベルを上げていくしかない。それなのに、現代の作家たちは、出来れば簡単にと、他人の釉の調合ばかりを知りたがる。この姿勢ではいつまでたっても自分の釉は作れないことでしょう。

 また、釉はそれ自体で存在するものではなく、器と一体となって存在するものです。つまり作り・粘土・焼きをも含めトータルでレベルを上げていかなければならないものでもあります。
その為にも、技術だけではなく、知識のレベルも上げていきたいものです。

 例えば・・・
 織部釉は透明釉に4%の銅を加えて誰もが簡単に作っていますが、どうして緑色になるか知っていますか?

 あの緑は透明釉に入れられた銅が一部は釉薬に溶け込み、残りの銅が細かい粒となって、釉中に浮遊している状態だから得られる色です。だから濃い色合いの織部にしようと思い、銅の量を増やしても意味がありません。釉薬の厚みを増すのが正解です。
 また素地土が弱いと泡が出やすいので、耐火度の強い土しか使えません。裏技としては、マグネシウムを入れて緑に深みを出したり、バリウムを入れ青みを出したり、骨灰を入れ美しい色合いにしたり、知識があれば自由自在に自分だけの織部釉が作り出せるものです。

 但し、科学知識に頼り過ぎてはいけませんが。
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by ogawagama | 2010-04-22 14:08 | 59 釉薬1