昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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63 長石

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 釉薬原料の代表といえば長石。というのも釉薬成分の20~90%がこの長石だから納得出来よう。

 この長石、実はある温度で急に溶けるのではなく、溶け始めてから溶け終わるまで100℃程の開きがあります。ガラスのようにある温度で一気に溶けるのではなく、ゆっくりじんわり溶けていく特徴があるのです。

 長石は大きく3つに分けられています。その元である花崗岩がゆっくり冷えて固まったものがペグマタイト長石。中でも成分にカリが多いものを「カリ長石」。ソーダーが多いものを「ソーダー長石」と呼び、花崗岩が早く冷え固まったものを「アプライト長石」と言う。

 しかし実際の自然界には、純粋なものはなく、混じり合っているので、はっきりは分類出来ませんが・・・。

 一言で長石といっても、それぞれには特徴があり、使い分けると、とても面白いものです。
 私は30種類以上持っていますが、具体的には、

 融点が低いのは、中国ソーダー、オーストラリア、レイ州。
逆に高いのは、三雲、釜戸、木曽、薮原。
焼き上がりの白さが良いのは、釜戸、群馬、三雲、対州、野岐沢。
緋色の出やすいものは、平津、平津風化、益田、野岐沢、佐久間。
焦げが出やすいものは、群馬、対州。
貫入が入り易いものは、益田、インドカリ、川俣。
他にも安宅、群馬ソーダー、扇山、由宇、南郷、針道、神岡、苗木、中国風化、宮田、インドソーダー、朝鮮、恵那等いろいろあります。

 志野に向くものや、織部に良いもの、青磁にピッタリなもの、それぞれの個性を理解し使い分けると実に面白いものです。長石だけにこだわってもいろんな焼き物が生まれそうです。

 小川窯では1980年代に集めた貴重な長石を、他の原料屋のようにトロミルで摺り潰さず、丁寧にスタンパーで砕いています。このやり方だと、長石それぞれが持つ結晶を壊さずに細かくしていることは、電子顕微鏡で見比べるとよく分かりますので。

 また長石はフルイ目を変えただけでも、楽しめます。これは50目が良い、いや80目が良い等。今自分が持っている長石のフルイ目にこだわっただけでも、新たな発見があるでしょう。

 もう一つ気にして欲しいのが、粒度分布。トロミルで強制的に摺り潰してしまうと、粒度が揃い過ぎてしまいます。これに比べスタンパーは硬すぎるものは砕けず、荒い粒子と細かい粒子に分かれる為、焼き上がりに深みが出ているようです。
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by ogawagama | 2012-03-07 09:15 | 63 長石