昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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64 鬼板

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 粘土探しに行くと、粘土層に混じってよく見つけるのが鬼板。御影石の中の雲母が集まって褐鉄鉱になったもので、板状の硬いものが多く鬼瓦に似ているところから、この名前が付いている。

 鬼板の鉄分含有量は40%もあり。昔の釉薬にはいろいろと使われていました。
こんなもの現在では手に入らないと思っている人が多いのではないだろうか。いやいや、美濃の山にはまだまだたくさんあります。
 とは言え、この天然鬼板は採れる場所で、その成分にかなりのバラつきがあります。

 そんな中、唐九郎が良く使っていたのが八草のもの。確かに私が使ったものの中でも一番発色が良かった。

 鉄は焼成中、1000℃が揮発のピークです。従ってその前後900~1130℃の間にいかに釉薬の表面に浮かびあがらせるかが勝負です。これ以上の温度では釉薬が溶けてしまいますので。

 話を戻しますが、唐九郎がなぜ八草の鬼板を選んだか。その答えは成分分析をして分かりました。自然界ではかなり珍しい揮発性が高い硫化鉄がたっぷり含まれているものだったからです。このことを唐九郎は経験と勘から分かっていたのでしょう。まさに目利き中の目利き。

 この鬼板、柔らかいものも有りますが、ほとんどのものがカチカチです。鉄の発色は粒子が細かければ細かい程良いので、焼き物の本場中国では、昔は専門の摺り師がいたそうで、親子何代にもわたって摺り続けられたものが使われていたそうです。さすがに小川窯では手摺りはしませんが、トロミルを4日以上回して細かくしています。

 この鬼板の最大の出番は何と言っても鉄絵でしょう。この時使う筆ですが、なるべく穂先の長いものを選んで、濃淡・強弱・動きを付けて描いてみましょう。普段から四季の草花を見て、そのままを描くのではなく、それらの一部の要素をデフォルメした絵というよりはデザインのようなものが焼き物には合うでしょうか。とにかく陶芸家は筆を持つ癖をつけることですね。
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by ogawagama | 2012-03-07 09:18 | 64 鬼板