昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

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67 電子顕微鏡

 2011年私は陶磁器を科学の眼からも追求したいと思い、岐阜県セラミックス研究所の研修生となり、自分が実際に扱っている原料を最先端の科学技術を使って見つめ直している。

 c0180774_13595781.jpg 原料の粒の大きさ・形を見たり、焼成後の表面形状・粒子の観察をするのが電子顕微鏡。一般の顕微鏡と違い直接覗くものではなく電子を当てて見るもので、陶芸原料は10ミクロン程度が多いので3000倍の倍率であらゆる原料を見比べています。

 自然界の鉱物はそれぞれが固有の結晶構造を持っており、個性豊かであり、同じものは二つとしてなく見ていて飽きないものです。

 さて実際には・・
 カオリンと粘土は成分がほぼ同じなのに、何が違うのか。電子顕微鏡で見ると結晶構造が全く違うことがすぐに分かる。カオリンは大小様々ではあるが、基本は六角形の立体構造であり、不純物がなくとてもきれいである。これに比べ粘土はカオリンより粒子がかなり細かく、粘土の基である鱗片状の結晶に細かい不純物がたくさんくっついていた。
 教科書にはカオリンはその場でそのまま花崗岩が風化したもの。粘土はこれが雨風で流され細かく分解され、そこに不純物が入り込みさらに細かくなったものと書かれていたが、電子顕微鏡で見たものは、まさにこの説明通りの姿であった。

 次に原土と製土を見比べてみると、原土は粘土の基の鱗片状の結晶がとてもきれいで、これが風化によってめくれてめくれて、段々細かくなっていることが分かった。
 これに比べ一般の製土はトロミルで摺り潰されて作られているので、鱗片状の結晶構造が破壊され、摺り潰された為に丸くなっており角のないものばかりであった。その上明らかに結晶構造が違う大きい粒の長石・珪石が後から加えられているのがはっきり見えた。
 天然の粘土ではなく、まさに合成された物体であった。

 同じくスタンパー長石は長石本来の結晶構造のまま細かくなっていたのだが、トロミルで摺った長石はやはり角のない何の結晶構造か分からないものばかりであった。

 同じ珪石でも鉱物の珪石と灰に含まれる珪石は全く違っていた。灰の中では鉱物としての結晶構造ではなくゼオライトという全く違った空洞状の結晶構造であり、この違いは3000倍で見るからこそ分かることである。

 このように自分が使っている原料を全て3000倍で見比べているのだが。自然界が何千年という時間をかけて作り上げた結晶構造はどれもが美しく、我々にこれを壊す権利はないとさえ思えた。これをこのまま生かす方向での焼き物作りをしなければと改めて感じることが出来た。

 上述の知識は以前から本では学んでいた。しかし正直「へぇ・・・」レベルでしかなかったのだが、実際に自分の眼で見たことによって、原料そのものをとても「愛せるもの」となった。とても良い経験である。
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by ogawagama | 2012-03-07 09:32 | 67 電子顕微鏡