昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

カテゴリ:68 粒度分布測定器( 1 )

68 粒度分布測定器

 c0180774_1432018.jpg原料の粒度とその分布を測定する装置だが、調べたい原料を大量の液体に均一に混ぜ入れ、レーザーを当て1分間に64回測り続けるというもの。

 1000ミクロンは1ミリのことです。ちなみに手で触って粒を感じる程度が10ミクロン以上らしい。一般の陶磁器用粘土は7~9ミクロンで作られ、釉薬は1ミクロン程度で精製されている、と聞いた。

 この粒度分布測定でも、大きな収穫があった。
 市販の粘土はどれを測っても、4ミクロンを中心に1~10ミクロンの範囲内にきれいに揃えられていた。そして自然界にある原土も、製土よりは荒いが分布図は同じようなパターンのものばかりである。
 しかし唐九郎が見つけたもぐさ土は、かなり特異な分布。1~10ミクロンの細かい粒と100~500ミクロンの荒い粒の二つのグループから成っていた。これは自然界ではとても珍しい分布であると。

 なぜ唐九郎がこの粘土を選んだのか。もぐさ土の定義は、「焼いて軽くなる土」。この特異な分布の土は、荒いものと細かいものから成る為、当然焼結すると空間がかなり空く、だから見た目より軽く感じるのであり、抹茶を飲む場合も、熱いものを入れてもじんわり手に温かく、お茶が冷めづらくおいしくいただける特徴を持つ。
 研究員いわく、「この分布のものは珪藻土以外見たことがない」そうです。

 そしてもう一つ、一般の粘土・釉薬はトロミルで摺り合わされ作られますが、このトロミルで原料を摺ると必ずきれいな富士山型の分布になってしまう。硬いものまでが強制的に摺り潰される為である。
c0180774_1445223.jpg

 小川窯の原料は基本、スタンパーでしか砕かない。このスタンパーを使うと硬すぎるものは砕けない。柔らかいものだけを細かくして、硬い余分なものはフルイを通して取り除かれ、1~15ミクロンの細かいものと、100~500ミクロンの荒いものの2つのグループに分かれる分布となる。

 現在スタンパーを使っているのは、九州の素地屋と小川窯だけであろうか。九州の良質な磁器土は、トロミルで摺り潰してしまうと粒度が揃い過ぎてしまい、粘りが出ない。これがスタンパーで砕くと細かいものと荒いものが得られ粘りが生まれるのだと。

 長石は昔は全てスタンパーで砕かれていたのだが、今は残念ながら無い。
 長石をスタンパーで短時間砕くと、柔らかい長石だけが砕かれ細かくなり、珪石は砕かれずそのまま残され、これを50目のフルイを通して販売しているのだが、珪石を取り除くことで耐火度が下げられ良質な長石となり、かつ上述の特異な粒度分布なものとなる。

 特に厚く釉薬をかける志野においては、生素地への厚がけが可能となり、その焼けも複雑で柔らかい白となり重宝されている。ちなみに志野においては釉薬の耐火度が低ければ低い程、美しい緋色が出ます。
 今でもスタンパー長石は市販されていますが、全てトロミルで摺り潰されたもので、珪石分が入り込み粒度分布も富士山型に揃えられたものしかありません。小川窯のものに比べて耐火度が30~50度高く、焼き上がりは・・・です。

 なぜ本物のスタンパー長石がなくなったか。それは作業効率の問題からです。スタンパーでは1日30キロしか砕けません。これに比べトロミルでは1日10トン以上摺り潰せるからです。全然違うでしょ・・・。
[PR]
by ogawagama | 2012-03-07 09:38 | 68 粒度分布測定器