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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

24 民芸品

 日本の民芸品を作ってきた人たちは、何も考えず用にせまられて、ひたすら作っただけです。故意につくり上げていないから、素朴で美しい。しかし、これをまねて作ったものは、ひどく嫌なものになる。ここに、民芸と芸術の大きな違いがあります。
 それを、戦後の民芸運動が一緒に扱ってしまった。これは大きな間違いです。
 
 民芸品は実用品ですから、そこに独自の美しさが備わる。奢り高ぶらない謙虚さと、身なりを慎むつつましやかさがある。これは、文化の恩恵に浴することの少ない自然豊かな地方で、その土地に住む純粋な人々がつくるものだから、美しいのです。これを、都会に住む芸術家たちが、まねして作るからおかしいのです。そしてもう一つ、民芸品は過去のものです。その時代時代の必要に応じて作られたものばかりで、その使命を果して用がなくなり、寿命が尽きれば亡びゆく運命にあるもの。これを芸術家が時代の要求なしに復活させたりすることは、実におかしいことではないでしょうか。
 
 何度も言いますが、地方に住む職人が、その土地、時代に応じたものを無心でつくるから、民芸品は良いのです。しかし、これをまねたものは実に見苦しいものになるだけです。芸術の世界においては、模倣の継承などあり得ないこと。そこに創造がなければ、作る意味すらないはず。昨日と同じものを作ることさえ恥ずべきことと自覚して下さい。
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                      「小鹿田焼」
by ogawagama | 2008-12-19 16:40 | 24 民芸品