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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

35 窯選び

 一口に薪窯と言ってもいろいろあります。
 焚き口の炎が真直に走る直焔式。
 焔が仕切られた各部屋の中で、回転しながら上へ抜けていく、倒焔式。
 この倒焔式の窯は、下で焚いた熱を、上の部屋でも利用する為、薪も少なくてすみ、焔も窯の中でぐるぐる回る為、ムラもなく、焚き易いものです。
 他にも、地下、半地下、地上の違いや、炎の通り道が、斜サマ、横サマ、縦サマの違いなども大きく影響します。
 
 私の窯は、「直焔式割竹登窯 横サマ仕様」とでも言いましょうか。
 
 なぜ、焚きづらい直焔式の窯を選んだのか。確かに、直焔式の窯構造は合理的ではありません。熱がこもらないし、ムラが出来る。火前・火裏がはっきり分かれる。割れ易い。制御しづらい。炎がこもらない為、薪をくべる量、タイミングを外すと、一気に温度が下がってしまう。これを戻す労力はかなり大変です。また、天候、窯づめの仕方で、焚き方を変えなければならない。つまり、窯のことを熟知し、自然と同化しないと良いものはなかなか焚けません。しかし、その分、生まれてくるやきものは神秘的で魅力的なものだから、私は迷わずこの窯を選びました。
 
 また、「ダンパー」(炎量制御板)は、あえて作らなかった。なぜかというと、ダンパーがあると、これに頼ってしまうからです。これがあると、実に焚き易くなりますが、窯づめと焚き方の因果関係が分からなくなるし、何より、作品が自然と同化したものにならなくなるのが、嫌だからです。

 窯選びは女房選びと同じです。よく考え、選び、一度使い始めたら直しながら、生涯をかけて使い続けたいものですね。

㊟ いい窯は、生涯使えるものです。しかし、最近の築炉メーカーは、わざと壊れ易い窯をつくります。一生一つの窯を使われては儲からない為、ヒビが入り易いレンガ積みをしています。気をつけて下さい。小川窯では、窯のメンテナンスもいたします。ご利用下さい。
by ogawagama | 2008-12-20 17:00 | 35 窯選び