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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

40 窯の場所

 全国各地で窯跡めぐりをしましたが、良いやきものを焼いた窯は、全て、小さな丘のような山にありました。そして、近くには小さな小川が流れており、そして、何といっても風向きですが、必ず、冬場に一定方向からの、吹き上げの風が吹くところに作ってあります。風が煙突の方から吹かれては、薪は燃えてくれません。温度が上がらないのです。逆に、下からの吹き上げの風は、薪をどんどん燃やしてくれます。
 
 また、薪窯において、湿気はない方が良いと一般の人は考えがちですが、良いやきものを焼いた窯は、必ず、湿気の多いところにありました。湿気は上手につき合うことで、還元がかけ易く、窯変が美しくなります。
 乾いた土地の窯は焚き易いのですが、いつも、同じ焼けのものしかとれません。均一な量産品を焼くには、こちらがおすすめです。
 
 また、窯を築く下の土質ですが、関東から北は、土質の耐火度が弱い為、その土地の粘土(sk8以下)を焼くのであれば大丈夫ですが、一般に出回っている土は、sk8以上の温度で焼かなければなりません。この場合は、窯の下の土を1mは掘り起こし、耐火度の強い土を入れないと、せっかく作った窯が初窯で地盤沈下します。窯の下の土が、焼けて溶けてしまうからです。気をつけて下さい。
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       「近くに小川が流れ、湿気が多く、北西の風が吹き抜ける山の中腹、三寸こう配」
by ogawagama | 2008-12-21 10:39 | 40 窯の場所