昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

46 もぐさ土

 小川窯では、原料屋として「もぐさ土」しか扱っていません。この、もぐさ土とは一体どんな土なのでしょう。

 1億年前の火山活動によって生み出された凝灰岩(ほとんどの陶土の母岩は花崗岩)が、300万年前の美濃地方にあった湖に堆積され、1万年以上かけて粘土になったものです。実際には、50cm~1mくらいの厚さ、または、塊状のものが、礫の間にはさまれた状態であり、従って、手掘りが基本となります。その多くは、まるで霜降り牛肉のように、赤い水酸化鉄の網目が残る、風化があまり進んでいない、白い蛙目粘土です。この模様は、高温多湿で、その土が、水に入ったり出たりの環境をくり返すことによって出来たものです。

 これを、「ハタキ」で用いると、焼き締めても、柔らかい雰囲気が残り、手取が軽く、茶碗をつくるのにぴったりな土です。
 美濃で多く採られている五斗蒔土と、成分的にはほとんど変わりはありませんが、個性は全く違います。このもぐさ土は、他の地域の粘土に、2~3割混ぜても、土味がとたんに柔らかくなる、魔法の土です。

 また、生きた土は、仕上げた作品を乾かしておくと、表面の色が褐色に変わります。これは、土にアルカリや可溶性の鉄分、水酸化鉄が含まれているからです。火色がとても出易く、釉ぎわが美しく焼け、変化に富みます。量産品には向きませんが、一品ものとしては、表情豊かで、個性的なやきものとなるでしょう。
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      「白、ピンク、黄色が、まるで霜降りの牛肉のように混じり合った、本物のもぐさ土」
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by ogawagama | 2008-12-21 16:02 | 46 もぐさ土