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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

47 良質な土

 地球の表面では、毎日、岩石が土に風化され、その土が変質させられて、膨大な量の粘土が今も絶えずつくられ続けています。しかし、これが、どこかに貯蔵されなくては、だだっ広い海へチョボチョボと流されるだけです。その上、海に堆積しては、基本的には、火に弱くて、陶土としては使えません。

 では、どうしたら良質の粘土がつくられるのでしょうか?答えは湖です。

 現在は、日本の国土の1%しか湖はありませんが、今から300~200万年前は、7%も湖がありました。仮に、1年に1㎝ずつ溜まったとしても、国土の7%ですから、ものすごい量の粘土がつくられていたわけです。
 確かに昔は、陶土なんて無限にあると考えられていました。それが、10年程前からは、「あと何年分しかないよ」と、各鉱山が言い始めました。まずは、各地の小規模な粘土鉱山が閉鎖され、最近は、日本の窯業の粘土を支え続けてきた大規模な、伊賀、瀬戸、美濃までも、閉鎖されてきています。

 そこで粘土業界は、工事現場から出た残土としての粘土や、海外の原料等、30種類以上の粘土をブレンドし、唐津土、萩土、備前土、信楽土、もぐさ土と、名前をつけ、製産しています。決して本物ではありません。ただ、成分が同じというだけなのです。悲しいけれど、これが一般の原料屋の現実です。
by ogawagama | 2008-12-21 16:23 | 47 良質な土