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昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

48 土の個性

 「土は生きている。生きているから個性がある。土は自らの個性にしたがって、自らの形を型づくるもの。志野の土は志野の土であって、織部の土は織部の土である。決して調合して出来るものではない。」
 加藤唐九郎の言葉である。

 自ら山に入り、土を採り、精製した人であれば、この言葉の意味が理解できよう。

 私も、それぞれの土が持っている個性を引き出すのが、作家の大切な仕事だと考えている。その為にも、土は混ぜないで使いたい。10%混ぜれば10%個性を失い、20%混ぜれば20%個性を失うものです。使う人間側の都合で、混合し、使い易くする前に、自然が何億年という時間をかけて創りあげた土の存在そのものを尊重し、これをどうしたら生かせるのかの、土づくり、成形法、焼成を考えることが、本来の陶工の仕事のはず。
 確かに手間と時間はかかるでしょうが、こうして出来た作品は、必ず、見る人に何かを感じさせるものとなることでしょう。

 江戸時代中期に活躍した陶工尾形乾山は、「この地上にある土で、やきものにならないものはない」という有名な言葉を残していますが、私たちの周りには、様々な種類の土や石がありますが、それぞれの特徴をつかめば、確かに乾山の言う通りとなるでしょう。凡人には難しいが、一流の陶工は、どんな素材も見事に使いこなせるのであろう。
by ogawagama | 2008-12-21 16:56 | 48 土の個性