昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

69 X線分析

 窯業界の三種の神器と言えば、電子顕微鏡・粒度分析装置そしてこの蛍光Ⅹ線分析装置。

 c0180774_15521710.jpgこの3つから調べれば、その原料の姿が90%は分かるそうです。残りの10%は現代の科学をもってすら解明不能らしい。自然界にある原料はきれいな単体で存在するのではなく、複雑に化合・結合・そして分解されている為、これ以上の分析は不要だと。
 しかし我々陶芸家にとっては、だからこそ天然原料は面白いのだし、究極の美に繋がるヒントがそこに隠されていると確信している。

 しかし残念ながら、全国に出回っている一般原料は、天然原料を科学的に分析して、分離・抽出して作り上げられた純度の高い単体原料を混ぜ合わせて作られたものばかりなのですが。

 さて話を戻して、ここからはⅩ線分析の説明に入ります。
 まずは定性分析といってその原料に何が入っているかを探ります。その後、定量分析でそれぞれの含有量を測るのですが、その際微量成分は切り捨て、やきものの8要素シリカ・アルミナ・チタン・鉄・マグネシウム・カルシウム・ナトリウム・カリウム・強熱減量から分析するというものです。

 20年以上原料を測定し続けている研究員が、小川窯の原料を調べて特に驚いた点をここで幾つか紹介したい。偏見を持たない為、あえて名前を伏せて測定をしてもらい所見を頂いた。

「桃山長石」こんなアルカリ分が多い長石は初めてだそうだ。この為緋色がかなり出る。

「中国カオリン」一般のカオリンはカリウムが0%なのに4%も入っておりカオリンというより粘土に近いものだと。これは実際に唐九郎が釉薬を作る時良く使ったものなのだが、白くて粘りがあり耐火度が低いから選んだのである。

「八草鬼板」鉄分が酸化鉄ではなく硫化鉄の形で入っている希少なもの。この為揮発性が高く一般のものより発色が良い。

「タンパン」硫酸銅ベースであることがすぐ分かる。揮発性が高く抜けタンパンになる。

「もぐさ土」一般の粘土はカリウムの半分ナトリウムが入っているはずが、ナトリウムがほとんど無い。実はこれ小川窯では山から採ってきた粘土を5年以上空気に触れさせ風化させている為、ナトリウムが抜けだしたからであろう。

「松灰」一般の松灰よりかなりマンガンが多い。このためビードロ釉等で使うとかなり色が濃い。

 等々。研究員が驚く天然原料ばかりであった。やはり唐九郎が選び抜き、残した原料たちは、まさに陶芸界の宝物ばかりであった。
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by ogawagama | 2012-03-07 09:42 | 69 X線分析