昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

98 炉圧

 やきものは温度だけで焼けるものではありません。温度と時間と炉圧によって焼けるものです。

 炉圧で焼く代表が志野。
 志野を焼いている時、窯は、まさに炉圧でパンパンです。窯に圧力がかかり天井が3センチ程上がります。
 同じ温度でも、炉圧をかけるとかなり早く焼けるもので、例えば志野は最高温度1180℃程ですが、時間と炉圧をかけてじっくり焼くので、1250℃で焼かなければ、溶けない志野釉が溶けてしまいます。
 逆に炉圧がかからず、炎が煙突から逃げていくばかりの穴窯ではいくら時間をかけても、いくら薪をくべても、1200℃以上の温度は得られず、器は焼けないものです。

 山の斜面を掘り、天井を付けただけの昔ながらの穴窯は、部屋を仕切る壁がない為、内部はただのトンネル状態。
 炎の性質は上へ上へと上がるだけ、燃やした炎が天井に上がりそのまま煙突から抜けるだけでは、なかなか温度は上がってくれません。
 これを解消する為に考え出されたのが、仕切り壁を付けること。
 天井に上がった炎を窯の下に下げ、炉圧をかけることで窯全体に炎が回り、温度を上がるようにしたのです。

 私は穴窯にはこの仕切り壁を、つまり捨て間を付けることを勧めます。
 昔の窯には付いていなかったから、そんなものはいらないと言う人が多いのですが、いらなければ使わなくて良いのです。ただこれを付けておけば炉圧がかかり、とても焚き易くなると説明して。
 しかしこの捨て間を作ると、文句を言っていた人に限って、ここは良いものが焼けるからと、この部屋に作品を一杯詰めて焼くようになります。3時間ほどで、穴窯本体と同じくらいの作品量が焼けるから当然でもあります。

 私の窯作りの考えは焚き易い窯を作ることです。
 焚きづらい窯で神経をすり減らし、何度も失敗を繰り返すより、焚き易い窯で、余裕や遊び心を持って楽しんで貰いたいからです。
 だから穴窯には捨て間、他の窯にもロストル・ダンパー・ドラフトを付けておきます。
 但し使うことは勧めません、いざという時に使うように伝えます。
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by ogawagama | 2012-03-07 22:05 | 98 炉圧