昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

104 炎の色

 私の窯焚きの師匠は、温度計を使わずいつも自分の眼だけで焚いていました。
 確かに、薪を焚べ続けていれば、どんな窯も次第に温度は上がっていくものです。そして炎の色・作品のテカリを見て、最後にテストピースを引き出し確認するだけで良いわけです。

 炎の色は、暗い赤から、オレンジ、黄、白色に段々明るくなっていきます。赤い炎であれば1100℃以下、オレンジの炎であれば1200℃程、黄色で1250℃程、1300℃を超えると白色になります。
 一般のやきものであればここで終わりなのですが、小川窯にはこの先があります。
 更に薪をくべ続けると、眩しく光り輝く白色となり、これが落ち着くと青みがかった白色となります。
 そしてこの炎は、今までのゴーゴーという力強く激しいものではなく、とても静かな優しい炎となり、このブルー炎を初めて見た時は体中に鳥肌が立ちました。
 あまりに静かで深くそして美しくて。

 話を戻しますが、温度計を使わず窯の中を見続けていると、この炎の色の変化が良くわかります。しかし、だいたい肉眼でとらえられるのは50℃の差まででしょうか。
 1100℃か1150℃かは分かりますが、1120℃か1130℃かは分かりません。
 しかし、そんな10℃、20℃の違いは実際の窯焚きには必要ありませんので。順調に色が明るくなっていけば良いだけです。

 もし薪をくべるタイミングがズレ始めてしまうと、窯は素直に段々色が暗くなっていきます。私はクモの巣と言いますが、下がり始めたことに気付けずそのままの焚き方を続けていると、クモの巣のようなものが作品にダラーッと全面に・・・。
 これは煤が絡み合ってクモの巣のように見えているものなのですが、これを見つけたときは、すぐに細い薪に切り替え、くべる本数を少なくして、その分回数を増やしてゆっくり温度を戻すしかありません。
 祈るような気持ちでひと焚べひと焚べ集中して。

 窯焚きに限っては、どんなに科学技術が発展しても、最後は自分の眼だけが頼りだと思っています。
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by ogawagama | 2012-03-07 22:57 | 104 炎の色