昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

111 織部2

 茶人でありデザイナーでもあった古田織部の指導の下、作られた織部焼。着色剤に銅を使うことによって、今までになかった新しいやきものである。

 桃山時代の織部釉は灰6・長石4の調合に銅を5%加えただけのもの。

 これに比べ現代のものは、安定性を求めて石灰石を使う。ここにバリウムを加えて青みを増したり、マグネシウムを加え深みを出したり、亜鉛華を加えて黄味をかけたりして、いろんな織部が作られているが、どれも一見鮮やかできれいなのだがどこか冷たく、ずっと見ていると、どうしても飽きてしまう。

 これに比べ昔ながらの灰立ての織部は、灰に含まれている5%のリン酸の影響か、柔らかく深く温か味もあり、見ていて飽きない。
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 鉄絵も現代は精製された弁柄を使う為、ペタッとした感じで安っぽく、絵自体も昔のものを真似て描いているので生命力がない。
 これに比べ昔の天然鬼板を使ったものは、自然な濃淡があり深みのある発色で、絵には動きがあり面白く、陶片だけを見ていても飽きない。

 そして私が一番こだわるのが白釉部分の緋色。釉際に出ている緋色の上品さに、ついつい目がいってしまう。
 織部は電気窯で12時間程でも焼けますが、私は志野の半分くらいの時間をかけて還元でゆっくり焼くことを勧めています。こうすることで白釉の釉際に優しい緋色が生じて、趣を増してくれるものです。
 また焼成後、織部は面倒だが、渋抜きをやらなければいけません。銅の表面に出た結晶のくすみを取る作業のことです。
 クヌギのヘタをバケツ3分の1入れ、水を一杯入れて2~3週間放っておく。ここに器を6時間入れてくすみを取ったり、塩酸を使う場合は3~5%に薄めて、ここに夏は1時間、冬は3時間浸け、大量の水を流して渋を抜かなくてはなりませんのでお忘れなく。

 くすんだ織部がキラッと光り輝く大切な最後の作業です。
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by ogawagama | 2012-03-08 10:17 | 111 織部2