113 黄瀬戸2
2012年 03月 08日
昔ながらの長石1・灰1の調合では同じ窯で、温度が5度変わっても、酸化・還元炎の雰囲気がちょっと違っただけでも焼き上がりが変わってしまう。
焼き上がりの違いから3つに分けられている。
ぐいのみ手・・釉に光沢がありビードロ肌。
アヤメ手 ・・艶がなく表面がざらっとしているあぶらげ肌。
菊皿手 ・・光沢がかなり強く微細な貫入があり黄色が濃い。
それぞれに美しく好みもあろうが、私のこだわりは、あぶらげ肌と自然に生まれる焦げである。この焼けを得るためには、ゆっくり還元で焼き、最後に酸化に戻し、昔の薪窯のように2日をかけてゆっくり冷ますようにしている。
あぶらげ肌は、ウオラストナイトという結晶鉱物が釉表面に折出し、半マットのガラス相に鉄分が溶け込んで出来る肌合い。これを出すにはゆっくり温度を上げ、ゆっくり下げるしか方法はない。
その上原料の厳選が欠かせない。長石は焦げの出やすいものを選び。灰はアクを残したものを使わなければならない。
あくまで昔ながらの長石1・灰1にこだわると、焼き方や原料にこだわっても、やはり100個に5~6個しかあぶらげ肌は生まれないであろう。
これでは困るので、新しいあぶらげ手もいろいろ考え出されている。
例えば鈴木五郎氏は土灰1・藁灰1の調合で焼く。しかしこれはかなりの低温で焼かなければならず、素地が焼けないという欠点がある。
これに比べ、白絵土1・樫灰1の調合は、還元でゆっくり焼きゆっくり冷ますことで、かなりの確率であぶらげ肌が取れるのだが、黄金色ではない。
我が師、熊谷忠雄は最晩年、黄瀬戸ばかりを焼いていた。92年かけても気にいった黄金色のあぶらげ肌は焼けなかった。美しい黄色とは実に奥が深く難しい・・・。
黄瀬戸にとって忘れてならないのが、アクセントの鉄絵とタンパン。
鉄絵に濃淡を出し、タンパンを抜けさせるにはやはり釉を生でかけるしかないだろう。
私もいつかは顔料を使わず天然原料だけで、光り輝く黄金色のあぶらげ肌黄瀬戸に挑戦したい。